ファッションブランド「HATRA」のRakuten Fashion Week TOKYO で発表の2025 秋冬コレクションに、FOREARTHでプリントした生地を提供

長見 佳祐氏からのコメント

どんな形であれ服のオリジナルを基にして大量に生産する複製生産は、少なからず環境に負担をかけているという意識が常に念頭にあります。それでも私たちが小さな規模で服を作り続けるのはなぜか。いつも自問しながら制作を続けています。
例えば、それは「未来の当たり前」のためのプロトタイプであるべきだと思います。HATRAでは3Dクロスシミュレーション、生成AIなどのデジタルテクノロジーを介しながら、制作工程全体が滑らかに繋がったデザイン手法を模索し続けています。従来は繊維の特性に合わせてプリント技法やデータ形式を工夫する必要がありましたが、FOREARTHでは、トリアセテートやキュプラなど今まで難しいとされていた生地に対しても、風合いの良さを保っていることに驚きました。それは単に工程を均質化するということだけではなく、「この生地にはこういう図柄」といったように、知らず知らずのうちに狭めてしまっているデザインの可能性を、軽やかに押し拡げることなのだと、加工サンプルを目の当たりにして感じました。
今回のコレクションでは氷やガラスなど透明なもののきらめきを感じさせるような、複雑な色彩表現にトライしました。「透明」を視覚的に感じさせるには、繊細なグラデーションを描写する必要があります。FOREARTHでプリントされた加工サンプルを拝見し、その再現力の高さを実感しました。そして何より素晴らしいのは、顔料インクでは難しかった柔らかな風合いを実現している点です。生地本来の質感を全く損なうことなく、まるで元からその色であったかのような仕上がりです。
今回はリサイクルポリエステルのブロード※でとても良い結果が得られましたが、次に叶うことなら、より表情豊かな素材の応用に取り組んでみたいです。将来的には、テキスタイル、型紙、プリント図案、縫製までもがなめらかに循環する、未来の服づくりが構築できると良いと思います。
また、従来の方法と異なり大量の水を使用しないため設置場所を選ばないことは、排水問題だけでなく、運送コストの削減や衣服の製造工程そのもののアップデートを促進していくでしょう。新しい色の載せ方、これひとつで見えてくる未来像が無数にあります。
今回のコラボレーションを経て、優れたイノベーションは、目的のためにただ制約を課すのではなく、それによって創造性を触発するものなのだと感じました。

※生地面に横畝(よこうね)がある高密度な平織り生地のこと

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