2010年度特集
包装設計における環境配慮への取り組み
- 紙系包装材への挑戦─それは、エコシスの誕生から。
- 包装材と製品。その両方を知り尽くしているから、弱点が克服できた。
- 徹底的な検証とフィードバックにより、製品と包装の両方が進化していく。
- これまでの技術の蓄積を土台に、新たな目標へ。
包装材と製品。その両方を知り尽くしているから、弱点が克服できた。
紙系の包装材にはどんな種類のものがありますか?
板野私たちがよく使うのは、段ボール、パルプモールドといった包装材です。段ボールは外箱、固定材、緩衝材として使用します。パルプモールドは緩衝材・固定材として使うことが多いです。
紙系の包装は、本当に環境に優しいのでしょうか?
中村段ボールは、回収・リサイクルのシステムが世界的に確立されており、使用済みの段ボールが新しい段ボールの主原料となっています。また、パルプモールドも、古紙が原料に使われ、回収・リサイクルされています。そのような面から、両方とも、循環型の包装材だと言えます。
板野両方とも、主に植物繊維でできています。特にパルプモールドは、紙を漉く原理で成形でき、仮に埋め立て処分する場合も、自然に還りやすく、土壌に悪影響を及ぼしません。
紙系の包装材に弱点はないのでしょうか?
中村あります。圧力や衝撃が加わると、つぶれやすく、元にもどりにくいのです。また、水分を吸収しやすく、湿気を帯びると強度が下がるのも弱点です。
そのような紙系の包装材の弱点を克服するために、どんな対策がとられているのでしょうか?
板野弱点があるからといって、包装材をたくさん使ってしまっては、環境にやさしい包装だとは言えません。できるだけ少ない包装材で、製品を十分に保護する包装を設計するには、包装材と製品両方の性質をよく知ることが大事です。
中村適切な包装をすることで、紙系だけでも十分な強度を持つ包装が可能なのです。私たちは自分たちの手で、段ボールを切って組み立てるところから、製品を包装した状態で行う試験まで、包装に関するあらゆることを手がけています。
板野流通時、荷役の方が手をすべらせ、箱が床に落ちてしまった場合にも、中の製品がちゃんと守られるように考えないといけないんです。そこが苦労するところです。大変な反面、考える楽しさもありますよ。紙系包装材は、自分ひとりで考えて、組み立てることができます。工作感覚で、アイディアが浮かんだらすぐに試作できるのも魅力です。
カラープリンターを梱包した状態で行う落下試験。底部のパルプモールドと製品の間に段ボールを1枚はさみ、衝撃を大幅に低減した。
中村33.5kgの製品包装にパルプモールドの緩衝材を使おうとしたことがあります。当時、パルプモールドは20kg以上の製品を載せるとつぶれてしまうと言われていたのですが、業界の常識に挑戦しました(笑)。最終的には製品とパルプモールドの間に段ボールを1枚はさむことで強度がアップし、梱包が可能になりました。最初からできないとあきらめず、追求していくことで、紙系包装の可能性はもっと広がっていくように感じています。